俳句
1 向日葵が天に向かってグンと伸び
2 ワクチンで今日はおあずけビール呑み
3 憂鬱な気持ちを晴らせ五輪の炎(エン)
4 夏来たり片瀬の浜の賑わいや
5 ひぐらしや水まんじゅうを指でつく
6 夕立が洗いし大葉で冷奴
7 シャバシャバとイチゴがピンクにかき氷
8 くしゃみする暑さ止まりて午前四時
9 夏祭り射的終えたら手握るぞ
10 岩手日報に包まれ届く夏野菜
11 草むしり庭整えて床屋かな
12 夏休み止まることなき二重跳び
13 宙(そら)を舞う君は真夏の冒険王
14 金銀銅喜色満面咲いた夏
15 距離を超え声援飛び交う地球祭典(ほしまつり)
16 喝采の数だけ空けしビール缶
17 幼子が姉となる日や夏の雲
18 白き光 花芯に秘めて蓮ひらく
19 いつのまに子より幼き球児かな
20 せせらぎに金魚憩うや笊(ざる)の中
21 遠雷や子ら待つ巣へと夫婦(めおと)鷺
22 天仰ぐ木槿(むくげ)パッチリ目千両(めせんりょう)
23 夏に跳べ讃えよ挑む者をこそ
24 ラムネ瓶ビー玉の謎寄り目かな
25 敗戦忌平和の意識彼方かな
26 会社みち汗したたりてとぼとぼと
27 盆休み父の介護で西東(にしひがし)
28 過去最高メダルとコロナと炎天下
29 白靴をぱきりと干して旅の空
30 物言えぬ受難の歴史鬼薊(おにあざみ)
31 夕立や灼熱の土匂ひ立つ
32 なにとなく決断迫る蝉時雨
33 蝉の声雲のまにまに五輪の輪
34 山上で流るる星を仰ぎ見る
35 猛暑にも早(はや)立秋の風感ず
36 オリンピック終わり待ちかね秋雨(あきさめ)や
37 夕立や雨音少し蝉みしぐれ
38 打ち水を庭先にまくと涼風呼ぶ
39 夏の夜花火彩る盛大に
40 涼風素よく風鈴チリンチン
41 狩野川に涼を招くや鮎背越し
42 塩焼きの苦みとともに夏盛り
43 涼しさや葉風立ちたつ竹小径
44 片口や切子に注ぐ冷やし酒
45 玉の汗全霊賭する勇姿かな
46 夏空や青き衝撃追い求め
47 逝きし人恋うる涙や青時雨
48 あぶら蝉龍馬と真逆の最期かな
49 空仰ぎ大の字眠る蝉哀れ
50 あ当たりありが舐めてるアイス棒
51 朱に染まる友にならいしサルスベリ
52 空見上げリスクマイヌよ夏の道
53 清流や忍野(おしの)の里に夏探し
54 青空に背筋伸ばして百合ひらき
55 妻が指す動かぬ蝉をそっと撫で
56 コロナ禍にメダルラッシュで暑気払い
57 遠き日のふるさとの風蚊帳(かや)の夜
58 背に西日マスク片手の影帽子
59 流星やバトンゾーンに消えた夢
60 竹婦人(ちくふじん)もう仰向けに眠れない
61 暑苦しい声は画眉鳥(がびちょう)捨てられた
62 炎天下草刈機唸る田んぼ道
63 迎え火を炊かずに空を仰ぎ見る
64 青大将玄関先で舌ちろり
65 幻のあの空に散るナツノハナ
66 また酷暑強く寄り添う影法師
67 鬼灯(ほおずき)やまぶたに棲みし影灯る
68 再びの笑顔にとける金メダル
69 朝の沼けはひ浮きたつ夏木立
70 溶けてゆくミミズ覆うは万の蟻
71 遠き空鳴るなり八月十五日
72 夕暮れは山なみの風冷し酒