2021年10月

1 路地裏の隅に一輪彼岸花
2 古寺や苔の階段里の秋
3 耳澄まし太鼓の音や秋祭り
4 窓いっぱい朝日まぶしき野分あと
5 名月や臥して見れずと友LINE
6 鬼皮に渋皮の山栗ごはん
7 香(か)で「もしや?」金木犀の二度開き
8 笑み栗の緑から茶に移りけり
9 月沈め金(きん)溶かしゆく雲の波
10 おもちゃ箱に朝顔の種神無月
11 少年と老犬の影秋夕焼(あきゆや)け
12 青き画布に遠慮がちなる雲の刷毛(はけ)
13 駿河湾赤富士合わせで鯛を釣る
14 急ぎ足振り向き様に金木犀
15 二つとなしピカソの描く柿紅葉
16 色うつりひとりで揺れるあざみかな
17 蓑虫や少年の蹴る缶の音
18 棉の実や平飼い鶏の産む卵
19 冷やかに坂道くだる七分袖
20 桐一葉外れて欲しい予感あり
21 空高く西へ一筋雲の筆
22 月見れば心は清く染まりけり
23 離れても満天の月共に見る
24 星の下(もと)夜長を友にまた一杯
25 秋富士や湖(うみ)を鏡に朝化粧
26 葉を落とし日向与うる古木かな
27 菊小紋弾む心や木挽町(こびきちょう)
28 指先のかさつきで知るああ秋と
29 居酒屋に明かりが灯る秋の宵
30 帰り路金木犀の香り立つ
31 蒼天に丹沢輝き秋高し
32 十六夜や地酒片手に時惜しむ
33 ひとつ星ぽつんと佇む秋夜空
34 新スマホ操作戸惑い夜長かな
35 揚げパンや給食想い花野道
36 秋深し白き露天湯後ろ髪
37 秋高し空で遊ぶ蜘蛛と雲
38 曼珠沙華いつの間にやら我が庭に
39 秋草や老犬戯れ種だらけ
40 老犬のリードに止まる赤トンボ
41 秋白く雲かかやきて手に温(ぬく)み
42 虫の闇五キロヘルツの恋ラジオ
43 ぼろぼろの斃(たふ)れし河原に月今宵
44 暮るる秋老いの忘却に追ひつけず
45 秋桜西陽も低くなりにけり
46 秋祭り響く囃子や和の時空
47 倒れまじ我一輪のコスモスや
48 草の花自由にひっそり咲きやがれ
49 朝日浴び初冠雪を待ち走る
50 朝日浴び輝く実りゴックリと
51 秋雨や耀く雲に木は緑
52 名月や天体地図を浮かび見る
53 悪疫を撃退してちょ秋の雷(らい)
54 密避けて出会えた山路の杜鵑草(ホトトギス)
55 粛然と赴任地へ発つ寒露節
56 今年米今年酒これ至福也
57 秋暑し赤子の腕の虫刺され
58 飲み残しファンタの赤や秋祭り
59 月光浴影くっきりとにらの花
60 冠(かむり)なし富士を横目に崎陽軒
61 水引の花穂(かすい)や風を逃し揺れ
62 青空に縄張る蜘蛛や日にふくる
63 秋気澄む二日で仕上げWeb入稿
64 はらはらと光たゆたふ秋日和
65 中秋の月は眩(まぶ)しく池照らす
66 薄雲に十五夜兎現れる
67 残暑耐え街を彩(いろど)るパンプキン
68 またひとつ日ごと色づく桜の葉