2021年11月

1 秋風や少女の手には参考書
2 埋め尽くす銀杏の実や大東京
3 何時もより視線を上げて秋麗
4 燃ゆる朝日と紅葉あり携帯は家
5 人招く鄙(ひな)の小布施の栗朱雀
6 土瓶蒸し蓋あけ放つ楽しさや
7 昆布を着る秋鯖寿司や古都の味
8 角打ちで奈良の新酒の背比べ
9 洋館の秋のベンチに竹箒
10 赤子泣く薬局を出づ秋日和
11 尾根の森谺(こだま)す母校の運動会
12 どんぐりの音して弾む葉の光
13 幼子の背にオナモミの土産かな
14 夜(よ)仕事の果報か空に寝待ち月
15 路地裏に花神のありて菊の列
16 水平線二色(ふたいろ)の青隔てけり
17 駄菓子屋の錆看板や落葉坂
18 栗名月(くりめいげつ)卒寿の母の旅話(たびばなし)
19 雲の影さざなみに溶け秋の水
20 三日目の既読スルーや木の葉髪(このはがみ)
21 肌寒き山はうすずみ雲の筆
22 落ち葉踏みフォルクローレの笛の音
23 色葉散る稲毛城址の紅葉狩り
24 葉も落ちて渋柿ぽつんと赤くなり
25 宴あと外苑ロードに黄緑葉(きみどりは)
26 ハロウィンや窓辺彩る瓜あかり
27 こだまする童(わらべ)の声や天高し
28 赤い実や吾の手の中思い出に
29 骨せんべい続ひて刺身秋刀魚かな
30 銀杏の香ばしぱくり酒ちびり
31 キャブトンの響きと巡る紅葉山
32 冬菜並ぶ料金箱に二百円
33 手を広げグルーヴ浴びる秋日和
34 小春日や白き生足リズム取る
35 立ち枯れし紫陽花疏水に顔浸ける
36 涙受けずれしマスクで目を覆う
37 枝先の残り葉ぴんと背筋伸び
38 すんとして秋の気澄みて狼狽(うろた)える
39 待ち遠し天津甘栗お土産(おみや)とな
40 落ち葉敷く雨の舗道を赤ヒール
41 カラコロと歩道を駆ける枯葉かな
42 秋の陽(ひ)の桜並木は柿の色
43 葉先から黄色く染まる銀杏の葉
44 またひとつ増えたサプリとクスリ達
45 老木やこうべ垂れるも月仰ぐ
46 夕光に輝く樹々の秋舞台
47 落ち葉踏み踏んだ落ち葉に思い馳せ
48 月星夜物語の語らいよ
49 日を終えて浴槽で聴く虫の声
50 墓石這う蔦一筋の鮮やかさ
51 冬近し自分で書いた謎のメモ
52 早朝の園庭にただ落葉掻(おちばかき)